ビタミンD不足とアルツハイマー病

アメリカでは去年、アルツハイマー病(AD)と診断された人はなんと530万人に上りました。ADは全米の死因の第6位にリストされ、これは乳ガンと前立腺ガンによる死亡数を合わせた数よりも多いとされます。全米アルツハイマー協会によると、ADは死因のトップ10の中で唯一、予防や治療法、そして進行を遅らせる方法のない病気だそうです。ADは経済面でもアメリカ国民に負担を与えています。去年一年間で、ADとその他の認知症の治療のためにかかる費用はは2,260億ドルに上り、2050年までに1.1兆ドルにまで跳ね上がると予想されています。

ADを患うと様々な症状を引き起こし、人々の日々の生活を脅かします。記憶の喪失、睡眠障害、判断力の低下、言語障害、そして偏執病(被害妄想や誇大妄想など)が現れる場合があります。ADの3分の2が女性です。驚くことにADを持つ55%の人たちは未だに医師から診断が下りていないということです。つまり、半分以上の人が自分がADだと気づかずに様々な障害に苦しんでいるのです。

では、ADはどうして起こるのでしょうか。残念なことに、科学者たちはAD の原因解明には至っておりません。しかし、ADのメカニズムに関していくつか分かってきたことがあります。ADの患者の脳を調べると、「プラーク(老人斑)」と神経線維の「もつれ」が多く蓄積していることが分かったのです。歯石=歯のプラークはみなさん聞いたことがあると思いますが、ADの脳ではたんぱく質の塊=プラークが蓄積し、脳細胞同士のコミュニケーションを妨げてしまいます。そして、神経線維のもつれは、死んだ(死にかけている)神経細胞が絡まった毛糸の糸のようになり、脳全体に栄養が行き届くのを防ぎ、脳細胞が栄養不足で死んでしまうのです。

その他の研究でもう一つ分かったことがあります。それは、ビタミンD不足がADと関係しているということです。ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種で、カルシウムや鉄、マグネシウム、亜鉛などの多くの重要なミネラルの吸収を助けてくれるビタミンです。体内でビタミンDが不足すると、骨や筋肉が弱くなったり、心臓や血管の障害、小児喘息、最悪の場合ガンの遠因になったりします。ビタミンDは前述のプラークを取り除く助けをしてくれるのです。ビタミンD不足の人たち(25nmol/L以下)が認知症にかかるリスクは、十分にビタミンDが体内にある人(75nmol/L以上)の4倍になります。他の研究では、記憶を司る脳内の海馬という場所にあるビタミンDの受容体の数が、ADの患者には少ないことがわかりました。ビタミンDは脳内でこの受容体とくっついて、私たちがどのように考え、学び、行動するかに影響を与えています。

ビタミンDは食事と日光浴から得ることができます。ビタミンDが豊富な食材は脂身の多い魚(サケ、マス、サバなど。サバは水銀が多く含まれるので食べ過ぎに注意してください)、牛の肝臓、ナッツ、チーズ、卵の黄身、キノコ類などがあります。食材が主に動物性のものですので、ベジタリアンの人は欠乏症に注意しましょう。オフィスや家にこもりがちな人や、ニューヨークや日本の東北地方など冬が長い地域にお住いの方、日焼け止めクリームや化粧品を多く使う方は、普段から十分な日光浴を行うよう心がけてください。食事や日光浴で満足なビタミンDを得られない場合は、サプリメントを摂取する必要があります。

では、どれくらいの量が必要なのでしょうか。栄養学に長けたカイロプラクターや栄養士なら、個人に最適なアドバイスができます。取り過ぎは危険ですので、しっかりと専門家と相談しながら適切な量を摂取するようにしてください。ビタミンDに関するご相談はこちらまで。

References:

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