今日のトピックはリーキーガット症候群です。日本でもポピュラーなのかなとサーチエンジンで調べてみましたら検索結果が多かったので、聞いたことがある方もいると思います。私たちの腸は大腸・小腸などを合わせて7〜9mもあるヒダ状の組織です。栄養の吸収は主に小腸で行われ、大腸では水分や塩分が吸収されます。消化された食物は、小腸の表面にある上皮細胞の隙間を通って体内に吸収されるのですが、この隙間は1〜1.5ナノメートルと非常に小さく、それ以上に大きい食物分子や体に有害な物質を体内に取り込まないように非常に複雑な堅牢な門のような構造をしています。この小さな隙間を「タイトジャンクション(密着結合)」と呼びますが、何らかの原因でタイトジャンクションが広がり、開きっぱなしになると、そこから毒が体内に入り込んでしまい、体に悪い影響を及ぼしてしまうのです。
では、どうしてタイトジャンクションが開きっぱなしになってしまうのでしょうか。原因は驚くほど多岐に及びます。
- 精糖(白い砂糖)の取り過ぎ
- ファストフード
- グルテン
- 牛乳(カゼイン)
- 加工食品
- 食物繊維不足
- 抗生物質の摂取
- 薬の常用
- ストレス
- 寄生虫感染
- バクテリア感染
- 栄養失調
- アルコール
- 脳震盪
- 脳梗塞
- ホルモン異常
- 自己免疫疾患
脳震盪や脳梗塞が、リーキーガットと何の関係があるのだろうと思うかもしれません。脳と腸は、ホルモンや自律神経、免疫・炎症システムなどを介してお互いの健康に深く関係しています。これを「腸脳軸(Gut-Brain Axis)」と呼びますが、ホットなトピックなので後日お話したいと思います。リストの中の多くは、タイトジャンクションを開くだけでなく、タイトジャンクション自体を破壊したり、上皮細胞をも殺してしまいます。
では、リーキーガットになると体にどのような影響が現れるのでしょう。リーキーガットは以下のような症状を引き起こしたり、症状のさらなる悪化と関連しています。
- 慢性疲労症候群
- 関節の痛み
- 肥満
- 鬱
- 1型糖尿病
- 心血管疾患
- 自己免疫疾患(甲状腺疾患、関節リウマチなど)
- 炎症性腸疾患(IBD)
- 小児疾患
- 自閉症
怖い病名がリストされていて少し心配になりますね。多くの研究が、グルテンや砂糖、加工食品を取り除くことによって甲状腺疾患や自閉症が改善するとサポートしています。 リーキーガットは防ぐことができますが、簡単ではありません。砂糖やグルテンを避けるのは思ったよりも難しいですし、醤油やケチャップなど意外な食品に含まれています。ストレスには肉体的ストレスや精神的ストレス、化学的ストレスなどいろいろな種類があります。寄生虫やバクテリアの感染は症状がない場合もあるので、血液検査や検便が必要になります。自己流だと思うような結果が得られないかもしれません。栄養学や機能性医学を専門とするカイロプラクターや栄養士に相談すると、的確な答えが見つかりますよ!
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